購入or賃貸 損得できめる時代ではない

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買う方が「得」とは言えなくなってきている

「家賃を支払っていても、その土地・建物は自分のものにはなりませんよ。だから買った方が得。それに今は金利も安い上に、地価も上がり始めてますから、将来は住替えでグレードアップも夢じゃありませんよ。」

住宅販売のセールストークによく出てくるセリフですね。

高度経済成長期(1955~73年)に購入した土地は、現在では場所によって当時の2~3倍の値をつけることもあります。買った時の2倍、3倍で売れれば「あの時買っておいて良かった」となりますし、売却益でより良い住まいを購入できるかもしれません。

しかし、今現在、買った土地が将来、昔と同じように地価が上昇するかといえば、その可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。おそらく大多数の方が、直感的に「地価がグーンと上がるなんて考えにくいな」と感じているはずです。

経済の低迷もありますし、人口減少という大きな要因もあります。

人口が減れば、土地の需要も減る。需要が減れば地価の大幅な上昇は望めない。これが自然な考え方だと思います。

もちろん、経済はそんなに単純なものではありませんし、将来何が起こるかわかりませんけれども、私見として、長期・全国的に見て地価は緩やかに下降していくのではないかと考えています。

つまり購入した戸建て・マンションの価値が値上がりどころか、値下がりする可能性も十分あり得るのです。

未来の事は誰にもわかりません。だからこそ、購入の際は起こりうる様々な事を想定しておかなければならないのです。

今の時代、単純に「家賃と同じ金額で家が買えるんだから、買った方が得」とはなりません。ライフスタイルや様々なリスクを考慮すると、賃貸住まいの方が良い場合もあるのです。

 

引き続き【自宅購入のリスク】についてお話していきます。

 

足立区の基準地価格の推移(住宅地)
対象年 住宅地(円)
2016 280,900
2015 273,200
2014 270,300
2013 267,900
2012 265,800
2011 267,200
2010 270,800
2009 282,300
2008 300,900
2007 288,700
2006 263,900
2005 235,600
2004 232,600
2003 235,100
2002 241,900
2001 253,000
2000 268,300

【東京都財務局 基準地調査 区市町村別用途別 平均価格の推移】より足立区の住宅地部分を抜粋

ご覧の通り2000年から2016年の間に地価の上昇・下降の動きはありますが、近年の上昇幅は1~2%程度です。また地価は立地(駅からの距離等)により大きく変動しますので、場所によっては横ばい・下落の所もあるでしょう。

 

足立区 人口の増減
平成 人口総数 前年との比較増減数
12(2000年) 636,370 △358
13 638,157 720
14 640,387 651
15 642,460 1,570
16 643,909 893
17 645,678 1,951
18 645,770 △64
19 646,461 549
20 653,323 5,983
21 658,302 4,183
22 665,179 6,808
23 667,891 2,560
24 668,730 1,223
25 669,143 23,472
26 670,385 1,242
27(2015年) 674,111 3,726

【足立区 数字で見る足立】より

足立区の人口は堅調に伸びてきています。

もちろん、この数値には他地域からの流入だけでなく、出生なども含まれています。また自宅を購入して足立区に越してきた人だけでなく、賃貸住まいの方も含まれています。

いずれにせよ、今時点では人口の流失よりも流入の方が多い状態にありますので、人口という要素において、急激な地価下落は当面ないと判断できるかもしれません。

 

自宅購入のリスク

1.自然災害リスク

東日本大震災、熊本地震など、まだ記憶に新しいかと思いますが、自宅を購入する際はこのような自然災害(地震・火災・洪水等)のリスクも想定しなければなりません。

例えば、住宅ローンが残っている状態で地震が発生し、建物の修理や修繕、建替えが必要となった場合、その修理費用はどう工面しますか?

十分な貯蓄があれば問題ありませんが、無ければお金を借りて修理をしなければなりません。

そうです。2重ローンになってしまうのです。

小規模な修理であればまだしも、半壊、全壊となるとその費用は莫大なものになり、重くずっしりとのしかかります。

 

そういった時の為に地震保険があるのです。

火災保険への地震保険の付帯率は2015年度で60.2%と年々上昇し、自然災害リスクに対する認知度・意識の向上が感じられます。

年度 火災保険への付帯率(%)
2011 53.7
2012 56.5
2013 58.1
2014 59.3
2015 60.2

損害保険料率算出機構 地震保険の付帯率の推移より

 

しかしながら、地震保険に加入することが正解なのかといえば、それはわからないのです。

加入すれば万一の時の安心感はありますが、結果、保険料負担が増え、家計を圧迫してしまう、貯金ができない等となると本末転倒です。

「加入せず貯蓄に回し、住宅ローンの繰り上げ返済に充てる」のも一つでしょうし、正解はありません。収入、住宅ローン、家族構成、貯蓄、子供の成長、教育費など全体をみながら検討することが大切です。

住宅販売の担当者が、自然災害リスクについて自ら話すという事は稀でしょう。「家が欲しい」という気持ちが萎んでしまいますからね。

しかし、このようなマイナス要因こそ、購入者は真剣に考慮すべきなのです。その結果、購入を見送る事になっても良いと思います。将来、対応のできないリスクを抱え込むよりもよっぽど正しい決断なのではないでしょうか。

 

2.柔軟性を失うリスク

大半の方が長期の住宅ローンを組んで自宅を購入しますので、一度買ってしまうと、買換えや引越しというのは簡単にはできません。

そこに柔軟性を奪う要素があるのです。

家族構成の変化

購入時に小学生だった子供たちが、10年後、独立していった場合、子供部屋が無用な空間になってしまう。しかしローンは20年以上残っている。

転勤

転勤が拒めず、単身赴任となってしまう。

ローンの返済を意識するあまり

「繰り上げ返済をしなくては」という観念にとらわれ、家族の楽しみを削ってまで、節約に追われる。旅行や家族の行事の回数を減らした等。

 

他にも様々なケースが考えられますが、自身や家族の幸せの為に購入した自宅に「拘束」されてしまう。

それが求めていたものでしょうか。

 

買う前は気持ちが高ぶっていますので「何とかなる」「その時はその時」と考えてしまうでしょう。しかし、購入後、興奮が冷めた後、「不安を覚える」という方は結構いらっしゃるのです。

「拘束」される要因の一つとして、「住宅ローン」の借り過ぎが挙げられます。

「住宅ローン」をしっかりコントロールすることが、自由で幸せな生活を手にする最も重要な要素なのではないでしょうか。

引き続き「住宅ローン」ついてお話していきます。

 

3.住宅ローンの借り過ぎリスク

家、いつ買う? 今じゃないでしょう!!

変動金利年0.497%なら月々62,268円

全期間引下げプラン・変動金利の利率(2016年10月31日現在。2016年11月適用)

【計算条件】お借入金額:3,000万円、返済期間:35年、元利均等返済・ボーナス月返済額93,491円・返済総額33,549,987円、借入利率が期間中に変動しない場合

じぶん銀行 住宅ローンより引用

住宅ローンが変動金利で5%を切る時代、

「今、購入すれば、月々のローン返済額は○円で、お支払いのお家賃よりも抑え目なんですよ。今が最後のチャンスです。」

などというセールストークにも納得してしまうだけの説得力がありますよね。

しかし、住宅ローンは30年、35年と長く付き合うものだからこそ、リスクを正しく認識した上で借入れをしなければなりません。

 

  • 変動金利は、その名の通り「変動」します。10年後、20年後も今と同じ超低金利とは限りません。貯蓄をしながら、繰り上げ返済をしていけるだけの「抑え目の返済額」にしていますか?
  • 頭金を十分に用意していますか?新築物件は住んだ瞬間、2割価格が下がると言われています。頭金が十分でないと、万一の時、売れない、貸せない、最後は競売、などということに事になりかねません。
  • 貯金を計画的にできていますか。貯金は住宅ローンの予行練習です。練習で上手くいかないと、本番でも中々上手くいきません。頭金0、フルローン、諸経費ローン……危険すぎませんか?
  • 営業担当者のいう「この借入れ金額なら審査は問題ありませんよ」は事実かもしれません。しかし、「審査」と「完済できるか」は別です。幸せな生活が送れるかも別です。「いくら借りられるのか」ではなく、「いくらなら確実に返していけるのか」の視点が大切です。

 

モデルハウスや新築物件を見てしまうと、どうしても「買いたい」「今しかチャンスがないかもしれない」という気になってしまいます。

確かに家は二つと同じものはありませんから、決断する事も大切です。

しかし、決断までに「熟慮」してみましたか?自然災害や購入によって拘束される事を想像してみましたか?パートナーと返済についてしっかりと検討してみましたか?

色々と「熟慮」した上で、決断したのならば、長い長い住宅ローンとの付き合いもきっと乗り越えて行けるでしょう。そして逆に「今は買う時期ではない」と決断する事も同じように大切なのです。

 

家は「損得」で買う時代ではなくなった。

冒頭に「家賃を払い続けても自分の財産にならない」という使い古されたセールストークのお話をしました。

このセリフには「お金がもったいない」という「損」を連想させ、「どうせお金を払うなら財産として残る方が得」というような思考回路を生み出します。

しかし、もはや「お金の損得」で自宅を購入する時代ではないのかもしれません。

 

賃貸市場は家賃も下落基調で、初期費用や更新料などの諸費用等を抑え目にしている物件も登場しています。

また、市場競争から建物の質も向上し、高い快適性・安全性・耐震性などを売りにしたハイグレードマンションなども建設されています。

将来的に行政による高齢者の賃貸住まい支援も推進されていくでしょう。もしかしたら「高齢だと部屋が借りずらい」という事が無くなるかもしれません。

そして賃貸ならではの「自由」、例えば家族構成やその時の収入に合わせた部屋に住み替えることができる、そういった点を考慮すると「お金」の面でも「賃貸は損」とは言えないのです。

 

では何をもって家を購入するのか。

それは十人十色、人によって違ってきます。

部屋を自分の思い通りにリフォームしたり、趣味の空間を作ったり、ガーデニングを楽しんだりと、賃貸では実現できない何かに魅かれ購入する、そんな方たちが今後増えていくのではないかと考えています。

 

長文、最後までお読み頂きありがとうございました。